出席者
近澤 悠志 先生
東京医科大学病院
臨床検査医学科 講師
長尾 梓 先生
関西医科大学附属病院
血液腫瘍内科 診療講師
阪口 直嗣 さん
Youth Hemophilia Club 代表/大阪ヘモフィリア友の会 理事
廣瀬 匠汰 さん
大分ヘモフィリア友の会
副会長
血友病の治療選択肢が増加するとともに、医療者と患者さん側が対等なパートナーとなり決定にかかわる、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM:共有意思決定)の重要性が高まってきています。今回、血友病の専門医と患者さんに参加いただき、SDMに向けてコミュニケーションを改善するにはどうすればよいかの座談会を開催しました。血友病当事者の阪口さんと廣瀬さんからは、医療者と患者さんが十分話し合えない場合の改善方法、治療選択を決断するために必要なことについて、多くのアドバイスをいただきました。血友病患者のみなさまに参考にしていただけるとさいわいです。
シェアード・ディシジョン・
メイキング
(SDM:共有意思決定)とは何か
血友病の治療選択肢が増加するとともに、患者さんと医療者がいっしょに決める医療であるシェアード・ディシジョン・メイキング(SDM:共有意思決定)の重要性が高まっています。
最近注目されているSDMは、望ましい選択を示す研究の成果が不十分、すなわちその治療法が最良かわからない場合に特に大切になります。医療者側は治療の選択肢について説明・提案し、重要なのは、患者さん側も治療に関する意向・希望を伝えることです。双方向のコミュニケーションを通して、目指す目と、目標に近づく方法が次第に共有され、意思決定と合意に至ります(図1)。「治療を決めるのは医師」という時代から、「患者さん側も治療決定に参加して、共に考え、決定する時代」になりつつあります。
SDMの概要
中山健夫,藤本修平編.実践シェアード・ディシジョン・メイキング 改題改訂第2版.2024,日本医事新報社
大竹文雄,平井啓.医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者.2018,東洋経済新報社
Epstein RM,et al. JAMA 2004;291(19):2359-2366.
Yahanda AT,Mozersky J.AMA J Ethics 2020;22(5):E416-422.
野原理子.働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート(厚生労働省・一般財団法人女性労働協会). ヘルスリテラシーを高めよう.
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/colum/colum33.html[2025年5月14日アクセス]
公益社団法人東京都医師会.ヘルスリテラシー.https://www.tokyo.med.or.jp/healthliteracy[2025年5月14日アクセス]
血友病領域では、世界血友病連盟(WFH)からシェアドディシジョンメイキング(SDM)ツールが提案されており、日本語版も公開されています(図2)1)。
血友病治療のSDMにおける医療チームの役割
このツールは、①「人生の目標と現在の治療について考える」から始まり、②「治療の選択肢について学ぶ」、③「治療の選択肢を比較する」、④「大切な人と話し合う」、⑤「医療機関を受診する準備をする」を経て、⑥「医療チームと率直で有意義な話し合いをする」へと進むプロセスをガイドするものです。
ここで特徴的なのは、⑥の対話から②の学習ステップへと戻る矢印が明示されている点です。本来、SDMは一度きりの決定ではなく、新たな疑問や価値観の変化に応じてプロセスを遡り、納得がいくまで対話を繰り返す「反復的なプロセス」であることが推奨されています。WFHのツールは、このSDMの基本理念を視覚的に表現しており、治療決定のプロセスは何度でもやり直してよいことを示しています。
SDMにおいては、患者さんが自分の意向や希望を医療者にうまく伝えることが成功の鍵になりますので、事前に意向や希望をまとめておいてもらう必要があります。図3にSDM前における意向・希望のまとめ方を示しましたので、情報をまとめておくことをお勧めします。
参考資料等
「遺伝子治療のトビラ」
「患者さんと医療者がいっしょに決める医療:シェアード・ディシジョン・メイキング(共有意思決定)」
監修:中山健夫先生
SDM前における意向・希望のまとめ方
患者さんのご家族のための意思決定ガイド オタワ意思決定ガイド(日本学術振興会(文部科学省)の研究助成金).https://decisionaid.ohri.ca/docs/das/OPDG_Japanese.pdf[2025年5月14日アクセス]
中山健夫,藤本修平編.実践シェアード・ディシジョン・メイキング 改題改訂第2版.2024,日本医事新報社
現状認識パート:
現状の外来と理想像/
課題の整理
それでは、まずWFH シェアドディシジョンメイキングツール(図2)の「⑥医療チームと率直で有意義な話し合いをする」に焦点を当て、現状と課題を明らかにしていきたいと思います。架空ケースを2つ準備していますので、それについてディスカッションを深めていきます。
架空ケース①
思春期の患者さんで、保護者ばかりが話し、患者本人が話さず意思がわかりにくい場合
保護者の方が会話の中心になってしまう場合も多いですが、医療者が自分に話しかけてきたら答える必要があること、自分が話しやすいと感じている看護師や理学療法士にも思っていることを話してみればよいことをまとめました。
架空ケース①では、15歳の患者さんが保護者同伴で来院したケースを取り扱います。幼少の頃から保護者が説明しているのでそれが続いてしまい、患者本人の発言は少ない状態です。医師は患者本人とコミュニケーションを取りたいと配慮していますが、患者本人の価値観は見えにくく、受診時間も限られていることから、深堀りの余裕がないというのが現状です。
このような場合、患者本人の声を中心にするには、最初の導入をどうすればよいでしょうか。
率直に、保護者の方に待機してもらうようにお願いして、患者本人に話してもらうようにすることが一番だと思います。しかし、会話の主導権を取りたがる保護者の方もいらっしゃるでしょう。お二人はどうでしたか。
私は父親か祖母に同伴してもらっていましたが、祖母が会話の主導権を取ることが多く、私はあまり話せませんでした。そのようなときには、医師と看護師が相談して、看護師から祖母に話があると言って席を外してもらい、その間に医師と私が話をすることもありました。
私は母親に同伴してもらっていましたが、どうしても母親が中心に話をすることが多くありました。母親もそのことを自覚し、小学校高学年の頃からは、母親は待合室で待機して私が一人で診察室に入るようになりました。自分で医師と話して、わからないことがある場合だけ母親を呼ぶようにしていたことで、徐々に医師に自分の状態を伝えられるようになりました。
保護者同伴の場合、保護者が会話の中心になってしまうことが多いので、私は患者本人に「今のお話で自分もOKかな?」と確認するようにしています。保護者の話と患者本人の受け止め方にずれがあるように感じた場合には、看護師にも改めて、患者本人の気持ちを確認してもらうようにしています。
阪口さんと廣瀬さん、患者さんの立場として、病院を受診して誰が一番相談しやすいですか。
私は看護師が一番声を掛けやすいと思います。
私は大分で受診しており、主治医は地域の血液内科の先生ですが、一番相談しやすいです。
理学療法士はリハビリのときに患者さんと長時間かかわることが多いですが、理学療法士は相談相手としていかがですか。
リハビリは月1回30分程度行ってもらいますが、私を担当する理学療法士は関節の部分を触っているときに、私が顔をしかめたりした瞬間に、そこが痛いのではないかと気づいてくれたことがありました。それで自分も初めて痛みがあったことを自覚しましたし、理学療法士が医師にその情報を共有してくれました。また、この箇所が痛むのであれば別の箇所も痛むのではないかと調べてくれたり、効果的なストレッチを指導してくれたりしました。
私は手術後にリハビリをする過程で理学療法士とかかわりましたが、ちょっとした動きで顔をしかめるとすぐに声を掛けてくれました。また、わかりやすいアドバイスもしてくれたので、すごいなと感心しましたし、話しやすい相手でした。
医師と看護師だけではなく、理学療法士や薬剤師などの第三者が違う視点でかかわってくださると、私たちも普段とは違った話ができると改めて感じました。チーム医療というのは重要だと思います。
患者さんから見て、血友病診療の経験が豊富な先生は話しやすいよう工夫されていると思いますか。
私の主治医は、何を言っても受け止めてくれるような包容力と、何を聞かれても私は答えられるよといった雰囲気を備えています。
私自身、看護師でもあるのですが、患者さんに接するときに大切にしているのは、相手に興味をもつということです。患者さんは現在どういうことを最も悩んでいるのか、どういうことに最も興味をもっているのかを知ろうと医療者側が意識すると変わってくると思います。
大分で通っていた施設は血友病を診る専門の施設ではありませんでした。私を担当してくださった主治医は血液内科の医師でした。私のほかにも血友病の子供を診察されており、患者会へも参加されていました。初めは話しづらいと感じていましたが、先生が私のことを思ってくださっていると感じるようになってからは、徐々に話ができるようになり、コミュニケーションも深まっていきました。
医療者側は、患者さんが話しやすい雰囲気を作ることが重要だと考えています。生活や趣味の話題から始めるという工夫も必要でしょう。保護者同伴の患者さんが医療者に意思を伝えるポイントを表1にまとめましたので参考にしてください。
保護者同伴の患者さんが医療者に意思を伝えるポイント
- 医師が保護者の方ではなく、直接あなたに話しかけたときは、できるだけ答えてみましょう。
- 話したいことがある場合、自分が話しやすいと思う看護師や理学療法士に話してみましょう。
- 一人で診察室に入ることに慣れると、自分の状態を自分の言葉で伝える力がついていきます。
架空ケース②
成人男性で、特に不満はないと話すが、会話が表層で終わりがちで本心がわかりにくい場合
成人患者さんの診察日の実際の気持ちを伺いました。医療者は、診察日に特段報告事項がない場合もあることを理解しつつ、丁寧な問いかけを続けることが、患者さんを理解するうえで大切だと考えています。
架空ケース②の状況は、日常診療でもしばしば経験します。20歳代の成人男性で通院は継続しており、現在の治療については「特に不満はない」と話されますが、ご自身が何を望んでいるのか、また日常生活で困っていることがあるのかどうかについては、十分に語られないことがあります。そのため、表面的には問題がないように見えても、実際には気持ちや困りごとが十分に共有されていない可能性もあり、医師としては丁寧に対話を重ねる必要があると感じます。
このような場合、「特に不満はない」という言葉をどのように受け止め、次の診療につなげていけばよいのでしょうか。阪口さん、本当は困っていることがあっても、「特に不満はない」と答えてしまうことはありますか。
あります。
そのときは、どういうお気持ちなのですか。
本当に困っていることが何もない場合もあります。一方で、「特に不満はない」と言いながら、実際には少し足が痛いと感じていることもあります。ただ、こちらから積極的に話すことはあまりなく、聞かれれば答える、ということが多いです。患者側は医師からの問いかけを待っていることも多く、どちらかというと受け身です。聞かれないから答えない、ということが、会話が表面的なところで終わってしまう1つの理由ではないかと思います。
そうですね。だから私も「特に不満はない」という雰囲気になったら、「では、肘関節の調子はどうですか?」など、一つひとつ確認するようにしています。
そうして聞いていただけると、患者側も症状のある部位を報告したほうがよいとわかります。
私は大分に住んでおり、毎月福岡まで通院していますが、最近は状態もよいので、今は薬剤を処方してもらうことが中心になっています。正直なところ、オンラインで面談して、地元で薬剤を入手できればよいのにと思います。
患者さんが診察日に特段報告事項がない場合も、もちろんあるのだと思います。そのことを理解しつつ、丁寧な問いかけを続けることが、患者さんを理解するうえで大切だと考えます。
最近では関節エコー検査を定期的に受けるように言われています。前回より結果が悪化していることを説明されると、患者さん自身も、実は関節が痛かったことを話すようになるかもしれません。
そうですね。医師としても、エコー検査の結果をもとに、患者さんと現状について詳しく話し合うことができます。
それでは、ケース②のような患者さんに、医療者は相談の一歩をどのように提案すれば、患者さんはより本心を話してくれるようになるでしょうか。
患者さんが来院するとき、受付の事務職員から声を掛けていただくのも1つの方法だと思います。受付の事務職員だと、医療者よりも話しやすいという患者さんもいるからです。
また、私が看護師として意識しているのは、少し踏み込んだことを聞くときの話し方です。たとえば、「答えにくかったら無理に答えなくてもよいけれど、今、本当に困っていることはない?」というように、答えなくてもよいことを最初に伝えるようにしています。そうした一言があるだけで、患者さんの心理的なハードルは下がり、本心を話してもらいやすくなると感じています。逆に、患者としての立場でも、そのように聞いてもらえると話しやすく、もともと話すつもりがなかったことまで自然に話せる気がします。
確かに、初めて会う医師の前では緊張して、思うように話せないこともありました。それでも話せるようになったのは、心のハードルを下げてくれるような会話があったからだと思います。 私が遠方から通っていることに配慮して、毎回、電車での移動は大変ではなかったかと気遣ってくださいます。
患者さんが話しやすくなるように、診察においては冒頭の会話にも工夫が必要ですね。成人の患者さんが医療者に意思を伝えるポイントを表2にまとめましたので参考にしてください。
成人の患者さんが医療者に意思を伝えるポイント
- 診察日に特段報告することがない場合もありますが、関節の状態など聞かれたことには答えるようにしましょう。
- 検査のあった日は結果について説明を受け、わからないこと、不安なことを聞くようにしましょう。
- 困っていることや気になることがあれば、受診の前にメモを書いておいて、医療者に渡すのも効果的です。
治療選択の実践パート:
治療選択の実体験をもとに議論
次は、WFH SDMツール(図2)の「③治療の選択肢を比較する」に焦点を当てます。阪口さんと廣瀬さんの実体験をもとに、患者さん側が価値観に基づいて選択肢を比較して決断する過程を見ていきます。
実体験 ①
人生の目標に合わせた治療変更
阪口さんは、中学生時代に野球をやりたいという希望を叶えるために、本人・医療者・家族が集合してSDMを行いました。治療の増強で野球ができるようになりました。就職や結婚などでライフスタイルが変わるときには、血友病の治療も変わってくるため、そのような場面でSDMを行うことは、大きな意義があります。
私は小学生の頃から野球をやりたいという希望を強くもっていました。しかし、野球をする場合は親の毎回の付き添いが必要であると監督から言われ、医師も私が野球をすることに消極的であったため、なかなか始めることができませんでした。いよいよ、野球を本格的に始めようとしていた頃に、顔にボールが当たってけがをしてしまいました。すると、親も心配してしまい、結局小学生のうちは野球をすることは叶いませんでした。
中学生になっても野球をやりたい気持ちは変わらなかったので、親に同伴してもらい医療者に相談に行きました。当時の治療は2日に1回の投与でしたが、用量が少なく、出血を繰り返すリスクが高い状況でした。
私は野球をやりたいという意思が非常に強く、受診前に自分の考えをまとめたメモを、医師に渡しました。そして、自分はこうしたいという思いを医療者に聞いてもらいました。
私が相談に行った日は、医師、看護師、薬剤師、医療事務の方々と、私と家族が会議室の丸いテーブルを囲んで話し合いました。私が野球をやりたいという思いをはっきり伝え、父親もそれを後押ししてくれました。それに対して、主治医や看護師がそれぞれの考えを述べ、ではどのような治療であれば野球に取り組めるのかを皆で話し合いました。当時は誰もSDMという言葉を知りませんでしたが、今振り返ると、その場ではまさにSDMが実践されていたのだと思います。 治療は、それまでの2~3倍の量の薬剤を投与することになりました。何か違和感を感じたら必ずすぐに報告するよう注意を受けましたが、それでも野球ができることのうれしさの方が勝っていました。それまでできなかったことができるようになると言われたときの喜びは、とても大きかったと感じています。
印象的なお話ですね。阪口さんのケースのように、多職種がそれぞれの視点を持ち寄りながら、患者さんの思いを中心に治療選択を一緒に考え、合意していくプロセスは、とても大切だと思います。
廣瀬さんは、こうしたいと思い立ったときに、患者会の方々に相談することはありますか。
私は子供の頃から大分の患者会に参加していました。ちょうど同じくらいの年齢の子どもが2、3人いて、同じような悩みを抱えていました。同世代の患者さんたちの話を聞いて、彼らの工夫を自分の生活の中に取り入れていました。私にとって患者会は心の支えであり、患者会があったからこそ今の自分があると感じています。
阪口さんはご自身の希望を伝えるのにメモを医師に渡しましたが、こうした場面では、ほかにどのような方法が考えられるでしょうか。
方法としては、事前に意向や希望を整理しておくことが大切で、図3を参考にSDMの前にまとめておくとよいと思います。また、SDMをどのようなタイミングで行うかというのも重要です。
SDMが特に重要になるタイミングの1つは、薬剤を変更したい場合だと思います。
就職や結婚などでライフスタイルが変わるときには、今後どのような生活を送りたいかという希望に応じて、血友病の治療も変わってくると思います。そのような場面でSDMを行うことには、大きな意義があると考えます。
だからこそ、医療者には患者さんの将来的なビジョンを聞いてほしいと思います。患者さんの中には、現在の治療に大きな不満や不安がないために、何を相談してよいかわからない方もいると思います。医療者側から、たとえば仕事、結婚、スポーツなど、今後の生活にかかわる選択肢を示していただけると、患者さんも将来の希望を描きやすくなると思います。
たとえば、「こういう治療にしたらスポーツもできるかもしれないよ」と示してもらえれば、実はスポーツをやってみたかった、という希望が患者さんから出てくる可能性もあると思います。
実体験 ②
不安を解消するために
廣瀬さんは、2022年に滑膜切除術か人工関節かを決断しなければならなくなりましたが、医師のわかりやすい説明により滑膜切除術を選択することができました。また、患者会の実際について紹介しました。同じ疾患を有する同世代の人と経験を共有しあえることは励みになります。
私が令和4年(2022年)に膝の滑膜切除術を受けたときの経緯をお話しします。当時、コーヒーショップで立ち仕事をしていましたが、次第に左膝が痛くなり、動きも悪くなって、走ったり階段の昇り降りに支障を来す状態が1年ほど続いていました。症状の改善がみられなかったため、普段通っている福岡の医師から東京の専門医を紹介されて受診しました。すると、膝の状態は思っていた以上に進行していることがわかりました。その際、滑膜切除術にするか人工関節にするかを早めに判断した方がよいと言われました。
どちらにするか、すぐに決めなければならないと思ったのですが、なかなか考えはまとまりませんでした。そのとき医師は、人工関節については金属を体内に入れること、動きにくくなる可能性があること、さらに何十年後かには入れ替えが必要になることを説明してくれました。一方で、滑膜切除術については、膝の中の滑膜を洗い流し、とげとげした部分を平らにする手術だと、イメージが湧くようにわかりやすく説明してくれました。また、滑膜切除術は定期的に繰り返し手術を受けなければならないわけではないとわかりました。そうした説明を踏まえ、現状やそれぞれのリスクを考えて、私は滑膜切除術を受けることを決めました。
治療選択肢が限られるときに納得した決断ができたのは、詳しい説明を受けて治療のイメージを持てたことでしょう。
阪口さんは、これまでに何か大きな決断をされたご経験はありますか。
YHC(Youth Hemophilia Club)の代表を引き受けたことが、大きな決断だったかもしれません。
自分が患者会にかかわるまでは、ほかの血友病患者さんを知らず、一人で孤独を感じていました。だからこそ、血友病の患者さんが孤独にならず、どのような人でも相談できる場所が世の中にあればよいと思いました。ネット上でも、みんなが集まれるような場があれば、血友病患者さんの支えになるのではないかと考えたのです。自分がその役割を担えるのであれば、引き受けようと自分なりに気持ちを整理して、スタートしました。
大切なお考えですね。自分のためだけではなく、他の血友病患者さんのためにという思いが、その決断を支えたのですね。
廣瀬さん、同じように治療選択で迷っている患者さんに、どのようなアドバイスができるでしょうか。
滑膜切除術については自分の経験をもとにアドバイスできると思います。また、患者会に相談してみることで、支えが得られることもあると思います。
次に血友病の患者会の活動について伺います。廣瀬さん、患者会では普段どのようなお話をするのですか。
幼少期の頃から、日常生活における困りごとや、どのように出血してそのときどうしたかなどの話題が多かったと思います。もちろん、ただおしゃべりをして楽しむという側面もあります。
私が所属している大分ヘモフィリア友の会は、最近は活動頻度は少なかったのですが、今年3月初旬に久しぶりに講演会を行いました。同じ世代の患者さんが大学進学や就職で県外に行くので会員が減ってしまっていますが、これからまた盛り上げていきたいと思います。
患者さんにとって患者会はあった方がよいです。同じ疾患を有する同世代の人と経験を共有しあえることは励みになります。現在はYHCとも活動を共にしていますが、楽しいと感じています。
阪口さん、YHCの活動について教えてください。
YHCでは、若い世代や子供や親御さんに、私たちが経験してきたことをもとに、現在の治療で悩んでいることや子供たちが言語化できない部分を、アドボケーター(代弁者)として話しています。たとえば私自身と廣瀬さんが経験してきたことも違うので、たくさんの人が発信すれば、さまざまな患者さんの立場について考えることができる場になると思っています。
全国の病院や患者会で、私たちだからこそできる話がたくさんあると思います。そして、病院同士や医療者、患者会などそれぞれの立場の人をつなぐパイプ役になりたいと願っています。それを実践するために、YHCの存在を全国で知ってもらい、今後もいろいろなイベントの企画や運営を続けていくつもりです。
まとめ
SDMという言葉自体は比較的最近よく聞かれるようになったものですが、本日みなさんとお話しして、私たち医療者が説明を行い、患者さんの意見をしっかり聞くということは、ずっと以前から大切にしていた考え方であると改めて感じました。今後も、どうすればお互いの意見を引き出しながら、両者が納得のいく治療選択につなげていけるかを考えていきたいと思います。
本日座談会に参加して、なかなか発言できない子供たちのためにも、治療選択の場でSDMを取り入れることも有益だと感じました。
SDMというものがあると知ったのは1~2年前ですが、それは過去に私たちが行っていた話し合いが、そのような形になっていると理解しています。
私はYHCの代表なので多くの先生方とお話しする機会も多く、医師に伝えにくいと感じることは現在あまりありませんが、全国の血友病患者さんには、医師に本音を十分に伝えにくい、患者同士のつながりがない、という悩みを抱えている方も多いと思います。私たちYHCとしても、SDMの考え方を広め浸透させていくことが大切だと考えています。
1)https://www1.wfh.org/publications/files/pdf-2488.pdf(2026年4月28日確認)
JPN-IDL-2266
2026年8月